ラルフ・ヒュッター、クラフトワークの音楽を語る (3/4)
「Red Bull Music Academy」サイトの2012年8月の記事より。インタビューそのものは1991年、「The Mix」のリリースに合わせて行われたものが、なぜか2010年まで公表されなかったとのこと。
→ Red Bull Music Academy - Interview: Kraftwerk
今回の「The Mix」までずっとアナログでレコーディングしてきてるんですか?
- そうだ。今は古いテープや何だかんだを全てディジタルに移し直したよ。
あなた方は常に最新のテクノロジーを駆使していると思われてますから、たいていの人には驚きなんじゃないですか?
- そうだね。「Electric Cafe」のレコーディングは、1980年代の初めだったが、アナログで始めて、途中でディジタル機材をいっぱい追加したんだけれども、結局、最後までアナログで完成させた。
コンピューターは人間の精神作用に何か影響を及ぼすと思いますか?
- 前もって作曲しておいて演奏することもある。一つのやり方だ。その場その場で即興で演奏していくこともある。私は「歌う指」、「喋る指」を持っている (下記参照)。フローリアンは「喋るタイプライター」を持っていて、発音記号と文字のキーを押すとそれに対応した音声が出る。だから、「話すタイプライター」とか「歌うタイプライター」と呼んでもいい。
あなた方が作ったんですか?
-
いや。ジーメンス (ドイツの総合電気通信会社) の古い大きなコンピューターのパーツを流用したんだ。フローリアンが持ち込んできて、技術担当に改造してもらった。アルバムの多くに入っている「声」は、それで作っている。
-
私はキーボードの担当だ。弾いている内に、指が勝手に動くというか、どこからともなく音楽がわいてくるというか、そうとしか説明しようがないんだけれども、すごくリラックスした気分になることがある。いつもって訳ではないし、それを後から編集したり加工したりしないといけなくなる訳だが、コンピューターを使ったそういう即興を目指してるんだよ。
ちなみに、「歌う指」とかの意味については、別のインタビューでこんなことを語っている。結局は上と同じ話だけど。「MOJO Magazine」誌の2005年8月の記事が「Technopop Archive」ってサイト (ってもクラフトワークねた限定) に2011年に再録されたものから、ちょっと抜粋。
→ Technopop Archive - MOJO Magazine - Ralf Huetter - August 2005
「歌う指」ってどういう意味ですか?
- シンセサイザーで「Trans Europe Express」や「Neon Lights」を弾いているのは、私の指なんだ。キーボードの上を勝手に動くことがあるんだよ。映画を観てたり新聞や本を読んでると、無意識の内に指が動き出す。ツール・ド・フランスの時にフランスの自転車の雑誌を読んでいると、指が勝手に練習を始める。サイクリングと同じで、何も聴いてない時がベストだ。自分の指なんだが、自動的に動く。曲の一部は前もって作曲しておかないといけない。だが、他の部分は機械の中からやってくる。「Trans Europe Express」がまさにそうだった。スタジオの中を列車が通り過ぎる、そういう感じで降ってきたんだ。つまり、自然に出来上がってくる、そんな音楽が私は一番好きだ。
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