トニー・ヴィスコンティ、デイヴィッド・ボウイを語る

26 January 2016  |  Tags: David Bowie, Tony Visconti

デイヴィッド・ボウイ、本当はまだ亡くなってないんだろ、新しいペルソナ (♦) として「故人」を選んだだけだろ、そう思いたい毎日だが、これはトニー・ヴィスコンティが「Mojo」誌の2016年3月号、ボウイ追悼特集に寄せたインタビューだそうだ。なぜかブライアン・イーノのサイト「More Dark than Shark」より。

→ More Dark than Shark | We All Thought He Had More Time - by Tony Visconti, Mojo March 2016


  • デイヴィッドの癌のことは1年前から知っていた。2015年の1月、彼から打合せに呼ばれたんだが、ひょっとして自分はお払い箱になるのかってくらい、不吉な予感がした。それで、オフィスに入ってったら、彼の眉毛がないんだ。言葉が出なかった。そうしたら、デイヴィッドが「見てもらいたいものがある」って言って、帽子をとった。髪の毛が一本もない。「癌なんだ.....」。その瞬間から私の人生は一変した。

  • 彼の前で、私は息が詰まりそうになった。「泣かないでくれ」、そう言ってくれたが、「無理だよ」。涙をぬぐっていると、彼は次のアルバムのことで、すごく前向きに喋り始めた。翌日からレコーディングに入ることになってたんだ。そのことは秘密にしていたが、癌のことを知って、それでもやっていくのは辛かった。

  • バンドの誰もが、彼が仕事に前向きなのに驚いて、最高の対応をしてくれた。彼のエネルギーは少しも衰えることなく、目の輝きはキラキラしていて、マイクに向かって、まるでウェンブリー・アリーナのステージにいるかのように、威勢よく歌っていた。そのエネルギーは6月くらいまで続いていて、アルバム作りをあれこれ進めていると、彼は切り抜けたのかな、もしかして無罪放免になったのかな、そう思えるほどだった。だが、11月にそれは戻ってきた。

  • 「Lazarus」や他の曲の歌詞を読んで、彼が何を考えてるのか、よく判った。これが最後のアルバムになるって、はっきり判ってたんだ。なので、あらゆるメッセージを歌詞に盛り込んでいた。「Lazarus」の出だしとかね。「何が言いたいんだか、判るよ」、そう言って微笑んだら、彼は笑った。

  • それを知ってしまったからには、「Blackstar」を最高傑作に仕上げるのが、私たちの使命になった。あらゆる手段をとった。出来る限り完璧な仕事をした。年が終わる頃にはデイヴィッドはどんどん弱っていったが、それでも私たちといる時には、あふれんばかりの喜びようで、いつも微笑みを絶やさず、これ以上の幸せはないって様子だった。

  • ザ・ビートルズは十代の若者に、自分たち自身の音楽、自分たち好みの洋服、そういうアイデンティティを与えて、世の中を変えた。デイヴィッドは同じことを、アウトサイダーの人たちに対してやった。陰に隠れた人たち、自分は人と違うって感じている人たち、社会に馴染めない人たちに、世界を開いたんだ。デイヴィッドの哲学、彼の歌詞、彼のライフスタイル、そして、彼自身が身をもって、どうすれば人と違っていられるか、どうすれば人と違うってことに勇気を持てるか、示してくれたんだ。

  • 彼はミュージシャンとしてもユニークだった。恐ろしく強力な作曲家で、変拍子も使える。「All the Young Dudes」のコーラス部に至る部分、あれがまさに彼だ。すごく広い音楽の素養から来てるんだろうと思う。ただのロックンローラーじゃない。リトル・リチャードも好きだし、ジェリー・マリガン (ジャズのサックス奏者) も同じように好きだし。古いものと新しいものの間でバランスを取るのが上手かったんだよ。そして、彼の「新しいもの」は、いつも大したものだった。歌詞について言えば、彼は偉大なロック詩人の一人だ。

  • 彼は常に真剣で、常に挑戦していた。「★」でドニー・マッカスリンのバンドとやることを話し合ってた時、「トニー、勉強しないとね。彼らは僕らよりずっと上にいる」。それで、私たちはドニーのレベルに達するまで勉強した。バンドが一発録りしたどのテイクにも彼が合わせて歌えたのは、そのおかげだ。勉強してたからだ。音楽にボーカルを沿わせてたんだ。デイヴィッドとバンドは息もピッタリで、「The Spiders from Jazz」って言っていい。

  • 彼と最後に会話したのは9日くらい前だ。FaceTimeでね。彼は電話が嫌いで、(Macの) カメラ越しに、こっちを見ていたいんだ。脱力しちゃうよ。iPadをオンにすると、デイヴィッド・ボウイが睨みつけてんだから。

  • 彼は最後まで楽天的だった。ずいぶん弱ってきてるけど、新しい治療法を試してみるつもりだとか、新しい曲を書いてて、さらに次のアルバムのレコーディングをどうしようとか、話してた。私たちも皆そうだけど、彼もまた、もっと時間があると思ってたんだろうな。


(♦) 「Ziggy Stardust」や「Thin White Duke」なんかが過去のペルソナ。



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