ラルフ・ヒュッター、「Autobahn」を語る (2/2) (クラフトワークのアルバムを語る (4/10))
時たま思い出したように取り上げてるクラフトワークだけど、これはアルバムごとにラルフ・ヒュッターが解説を加えている記事。「Uncut」誌の2009年10月の記事が去年の「Retrospective」ツアーに向けてウェブにアップロードされたものなので、その時に紹介すればよかったかも。全8枚。
→ Uncut | Kraftwerk - Album by Album
「Autobahn」(1974) (続き)
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ザ・ビーチ・ボーイズの曲 (「Fun Fun Fun」) と比べると、あれはフォードのサンダーバードについての歌だ。自分たちのほうは、フォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツになる。裏にある国民性も違う。ライン川でサーフィンしてるのか、なんて聞いてくる人もいた。たぶんね、けど、波がないんだよ、とか。わざとらしい冗談だが、いずれにしても、これはザ・ビーチ・ボーイズのアルバムではない。クラフトワークのアルバムだ。
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全てのトラックが、いわば短篇映画のループを構成しているんだ。「Morgenspaziergang」(ドイツ語で朝の散歩) は、スタジオから外に出てきた時の気分を曲にしたものだ。いつも徹夜で作業していた。朝になると、何もかもが新鮮で、ひっそりしていて、自分たちの耳も改めて外に開かれてくる。
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この「Autobahn」を持って、初めてドイツ国外にツアーに出た。パリ大学が最初だった。1973年だったと思う。その後、アメリカでかなり長いツアーをして、イギリスでも短いツアーをした。しかし、ドイツ国内では全く注目してもらえなくて、ツアーもキャンセルせざるをえなかった。1975年のことだ。
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このアルバムは巨大な成功をおさめたが、ライブで見られるなんて、誰も思ってなかった。スタジオ録音だろ? 電子音楽だろ? そんな感じで、「Autobahn」のアルバムはクラフトワークってバンドであって、それを見よう、なんて誰も思わなかったんだ。それ以前には、1960年代終わりから1973年まで、ドイツ中をいつもツアーで回っていたのにだ。その3年後には、我々を見たいって、誰にも思ってもらえなくなってしまった。1981年に改めて戻ってきたが、やはり他の国々とは全く違っていた。
「Autobahn」の歌詞に出てくる「fahren fahren fahren」(英語のdriveに当たる) が、ザ・ビーチ・ボーイズの「Fun Fun Fun」を思わせて、どっちも車が出てくる曲なんで、「Autobahn」は「Fun Fun Fun」へのオマージュなんじゃないかって説がある。ヒュッターが「車の曲じゃない」「ザ・ビーチ・ボーイズとは違う」って繰り返してるのは、そのせい。
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