エドワード・ヴァン・ヘイレン+スティーヴ・ルカサー、1993年のインタビュー (まとめ)

04 May 2015  |  Tags: Edward Van Halen, Steve Lukather

2012/7/4から紹介した 「エドワード・ヴァン・ヘイレン、スティーヴ・ルカサーと語る」 の全体を一つにまとめた。「Guitar - for the Practicing Musician」誌の1993年9月に掲載されたもの。スティーヴ・ルカサーの公式サイトにある記事だが、URLが変わっていたので、ついでに更新。

→ Guitar - for the Practicing Musician | Edward Van Halen - EVH interviews Luke


エディ:なんで音楽をやってるわけ?

  • ルーク:それしかできないからな。

エディ:きっかけは誰? 家族? 友達?

  • ルーク:音楽の才能があるのなんて、家族には一人もいないよ。

エディ:お前がいるじゃないか。

  • ルーク:そりゃ疑問だな。

エディ:なんで、音楽を、やってるんだよ。

  • ルーク:7歳の時に、親父がギターと「Meet the Beatles」を買ってくれた。もう全身全霊が圧倒されたんだ。俺がやりたいのはこれだ、ってね。ジョージ・ハリスンの「I Saw Her Standing There」のソロ、ベンドやリヴァーブの音、衝撃だったのを憶えてるよ。

エディ:それですぐにギターを始めたってことか。

  • ルーク:そう。

エディ:ピアノもすごく上手いじゃないか。

  • ルーク:まさか。

エディ:他の知ってる奴らに比べればな (笑)。

  • ルーク:ギターは独学だ。それから、年上の友達からコードを教わったりした。

エディ:ジャズとかはどうやって身につけた?

  • ルーク:それは後からのことだよ。高校でポーカロの兄弟と一緒になった。彼らの親父さんはスタジオ・ミュージシャンだ。ジェフ・ポーカロやデイヴィッド・ペイチは俺よりちょっと年上で、もうセッションとかやってた。

エディ:譜面を読んだりするのも独学?

  • ルーク:いや、15歳くらいから、ジミー・ワイブル (クラシック/ジャズ/カントリーのギタリスト) のレッスンを受け始めた。譜面の読みかたも教わったし、他にもオーケストレーションとか、山ほどレッスンを受けたよ。あの頃はとにかく好奇心のかたまりだった。そんなこと、高校に入るまで何も知らなかったからな。ガキの頃はただ、すごいアーティストたちと演奏できたらカッコいいだろな、くらいに思ってたんだ。

エディ:それで地球上のあらゆる人と共演してきたわけか。スタジオ・ミュージシャンのトップだったよな。

  • ルーク:そうかな。ま、アンプのボリュームをいつでもトップに持ってくのは、俺くらいしかいないしな。譜面も仕事に必要な程度には読めるし。あれは外国語の練習みたいなもんだ。やらないでいると出来なくなるし、いつも鍛えとかないと。

エディ:同じ数のセッションをこなしてたら、俺なんか燃え尽きちまうよ。

  • ルーク:俺だってとっくに燃え尽きてるんだけど。

エディ:よくトトのための時間がひねり出せるな。トトの曲作りにもセッション活動は影響してるのか?

  • ルーク:いい質問だな。時間についていえば、トトをやってる時には、トトのことしかやらない。トトのツアーに出てない間は、時間は沢山ある。週に20セッションこなしても、まだ時間はある。曲作りについていえば、色んなことが影響しないはずはないよな。ラジオを聴くのだって、誰かのアルバムで演奏するのだって。もしも「R & Bの日」ってのがあったら、頭ん中はグルーブで一杯になって、家でキーボードやギターに触っても、そのグルーブが曲作りに出てきちゃうだろ。ロックなセッションをしてたら、やっぱり頭ん中はそれで一杯になって、無意識の内に曲作りにも出てくるだろ。

エディ:色んなスタイルを知ってるのが曲作りにも役立ってるのか?

  • ルーク:そりゃそうだ。俺はトトの他でも曲を作ってる。グラミー賞の「ベストR & Bソング」(ジョージ・ベンソンの1982年の「Turn Your Love Around」) を受賞してんだぜ。そこらのロック・ミュージシャンには無理だろ。

エディ:とてつもなく幅が広いよな。ファンクからジャズから何でも、俺が聴いたことのないようなのまで。

  • ルーク:誰にも聴いて欲しくないようなのも沢山あるよ (二人爆笑)。

エディ:トトに入ったのは、リセットしたかったからか何かなのか?

  • ルーク:バンドでやりたいってずっと思ってただけだ。今こんなふうにやってるのは、たまたまなんだよ。ジェフ (ポーカロ) がセッションになるといつも俺を推薦してくれてさ。それで、気がついたら、週に20セッションだ。大したミュージシャンたちとね。何も予習なしに、1日に全く違う4つのスタイルでやんなきゃいけない。テープが送られてきて曲を勉強するなんてのとは、わけが違う。

エディ:その場その場で考えてかなきゃいけないってことか。

  • ルーク:そう。パートを考えて、1テイクとか3テイクとか録音する。うまく合わせてかないといけない。

エディ:くそったれにしてかないといけない。

  • ルーク:うまく、合わせてかないと、いけない。それに、ヘマする奴なんかに用はない。

エディ:「はい、次」。

  • ルーク:そうそう。仕事を欲しがってる奴らは山ほどいるんだ。こんなセッション活動ばかりやってると、俺の演奏をわざわざ聴こうとしなくても、そこら中で聴けるようになる。一日中ずっと譜面をにらんでる道化師なんかで終わるよりも、トトだけで活動してたほうがギタリストとして有難みが増えるかも知れないって思ったりもする。

エディ:よく判らないな。

  • ルーク:大したセッションもあるし、大したアルバムもある。特に1970年代終わりから1980年代初めにかけてはね。俺の活動のピークでもある。あの頃に戻りたいよ。ほんと、とんでもないアーティストもいるんだ。なんでこんな奴らがレコーディング契約ができるんだ、みたいな。もう俺たちは最大限の努力をしないといけない。最悪な状況を少しでも何とかしたいからね。アレンジし直し、曲の作り直しとか当り前なんだ。たぶんセッションの15%くらいは素晴らしい。残りはクズだ。忘れていい。ドン・ヘンリー、ボズ・スキャッグス、エルトン・ジョンあたりは、実にクリエイティヴで楽しかった。

エディ:その頃だよな。俺が最初に会ったのは。

  • ルーク:1980年だったよな。ツアーに出ようとしてて、アンプを借りに行ったんだ。

エディ:俺のほうは「Women and Children First」を作ってた。いい日だった。

  • ルーク:俺たち二人とも、それからずいぶん変わったな。

エディ:まだセッションはやってるのか?

  • ルーク:この2年で4枚のアルバムに参加した。

エディ:セッション・プレーヤーってすごいと思うんだけど、もうやらないのか。

  • ルーク:ずいぶん長くやってきたけど、もうやらないよ。「スタジオ野郎」とか言われるのは、いい加減うんざりなんだ。自慢の仕事もあるし、恥ずかしい仕事もある。たまには、あかを落とさないとな。もうやりたくないってことなんだ。俺は好きな音楽を尊敬できる人たちとやりたいんだよ。俺がやってきたようなことをやりたいっていう若い連中は沢山いる。彼らがやればいい。

エディ:わかった、わかった。勉強したってことだな。

  • ルーク:まぁ、「スタジオ野郎」をやってなかったらとても共演なんかできなかったような世界中の最高の人たちとも、おかげで一緒に仕事する機会があったのは確かだけど。

エディ:それは、お前が完璧なミュージシャンだからだろ。何でもこなす。ジャズでも何でも、どんなバンドにいてもやっていける。俺はヴァン・ヘイレンでやってきただけだ。

  • ルーク:俺は今はやっていけてるけどな (笑)。お前と俺の違いは、お前は自分のバンドで満ち足りてる。よそで別のことをやりたいなんて思わないだろ。

エディ:それって、例えばもしも俺がソロアルバムを作るとしたら、やっぱりサミーとマイクとアレックスに手伝ってもらう、ってことだろな。

  • ルーク:つまり、お前はいつも自分のソロアルバムを作ってるってことなんだよ。人はそれぞれ、違う願望を持ってるんだ。

エディ:ツアーに出るだろ。それは仕事だからか? 女を抱くためか? それとも、女を抱くために仕事してんのか?

  • ルーク:え、女を抱くために仕事してんだよ (笑)。俺は独身だから、何の問題もない。けど、ツアーで金が稼げるようになるには、ずいぶんかかったよな。たいていの人は勘違いしてるけど、最初からツアーで大金持ちなんてありえない。前座をやってた頃のこととか、憶えてるか? 毎週毎週、金が消えてくんだ。

エディ:そうなんだよ! 13ヶ月も世界中でツアーし続けて、イギリスで26日間に25公演もやって、それでもまだワーナーブラザースに借金があったって、どういうことだよ。ろくでもない契約だったんだ。

  • ルーク:けど、いいよな、最初のアルバムで一気に成層圏まで行っちまったってのは。

エディ:お前らのバンドのほうが地球上で最高のミュージシャンの集まりじゃないか。

  • ルーク:なに言ってんだよ。

エディ:真面目なんだぜ。お前らほどまとまってるバンド、見たことない。お前だろ、ペイチだろ、ポーカロ兄弟だろ。ジェフ、安らかに眠ってくれ。最高のミュージシャンたちだ。1年にグラミー賞を8つもだ。なんでマスコミからあんなに叩かれるんだ?

  • ルーク:奴らはいつもそうだよ。これからもずっとな。グラミー賞は10年も前のことだ。売れたんで、ご褒美みたいなもんだったんだろう。

エディ:お前らが最高だったからだろ。

  • ルーク:まぁ、奴らが何を考えてんだか、ちっとも判らないよ。

エディ:評論家ってどう思う。

  • ルーク:誰もが自分の意見を好き勝手に言っていいとは限らないよな。お前らだってマスコミから叩かれただろ。近頃じゃ、ギターの第一ポジションでコードが弾けたり、深い意味の歌詞が書けたりしても、ますますどうでもよくなってきてる。俺は良い音楽を演奏したい、良いミュージシャンになりたい、それだけだ。だが、世の中にはもう一つ別の考えかたがあるらしい。評論家って奴らは、判りやすいものしか認めないんだ。

エディ:自分が理解できないものは厄介だからな。

  • ルーク:インストゥルメンタルを評論してみてもらいたいもんだよ。ロバート・ヒルバーン (アメリカの有名なポップス評論家。ロサンゼルス・タイムズ紙にずっと評論コラムを持っていた) みたいな奴らにだ。クラシックを聴かせて、「評論してみろよ。どこに改良の余地がある?」ってな。

エディ:奴らっていつもそうなんだよな。もっと良いやりかたを自分たちは知ってんだ、みたいな。

  • ルーク:まさに。それに、その通りにやったとしても、やっぱり嫌われるんだよ。

エディ:そうそう、ほんと。

  • ルーク:どっちにしても叩かれる。ま、けど、「アマデウス」(モーツァルトを描いた映画) の昔からある話だからな。国王側近の音楽家が「音が多すぎるようですな」って言ったんで、モーツァルトが「どの音がご不満で?」って (笑)。そういうことだろ。

エディ:インストゥルメンタルってことじゃ、どうやって曲のタイトルを付ける?

  • ルーク:だいたい俺は、遊びバンドのロス・ロボトミーズ (Los Lobotomys) でメンバーを笑わせるために、色々やってるだけだ。俺は妙な奴なんだよ。判ってるだろ。

エディ:フューノット (Phuxnot) だっけ、そんなバンドもやったよな。

  • ルーク:俺、お前、マイク・ランドー、ウィル・リー、デイヴィッド・ガーフィールド、カルロス・ヴェガだったよな。一回限りでさ、ヘンドリックスやクリームやロボトミーズの曲をやったんだ。

エディ:すごかったよ。

  • ルーク:ほんのお遊びだ。

エディ:キャンディーマンってか、サミー・デイヴィス・ジュニアにのぼせ上がってたのは、どうなったんだよ。それとか、オークションで手に入れたメダルってのは。

  • ルーク:あれは実際には、(トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの) スタン・リンチからもらったんだ。幸運のお守りとしてな。サミーはもう長年ずっと俺の人生の要だった。世界で一番かっこいい。ちゃかしてるわけじゃないよ。彼のことは調べ尽くした。出てる映画は全部観てる。ラスベガスを体現してるんだ。彼が持ってたゴルフクラブセットも手に入れてる。バッグには「The Candyman」って書いてあって、一本一本のクラブには彼の顔が小さく掘り込んである。サミーは本当に幸運を呼び込んでくれるんだ。こないだのツアーじゃどのステージでも、ライトがつく直前に彼の「What Kind of Fool Am I」をやった。デイヴィッド・ペイチのお父さんのマーティが、あれのストリングスをアレンジしたんだよ。みんなサミーのメダルにタッチして、ステージで幸運を祈るんだ。サミーのまわりでハドルを組むんだ。

エディ:お前のそのアホみたいなジョーク、いったいどっから出てくるんだ。そのジョークのセンス、誰にも真似できないよ。

  • ルーク:俺の演奏を聴いて、そう言ってんだろ。

エディ:真面目に答えろよ。ジェフとお前は、兄貴のアレックスと俺くらい、仲良かったのか。

  • ルーク:そうだ。ジェフは俺を導いてくれた。心から尊敬してる。ポーカロの兄弟たちは俺が音楽ビジネスでやっていくきっかけを作ってくれたんだ。1972年に最初に会った時、ジェフはもうスティーリー・ダンのメンバーだった。そういう環境で育つことができたのは幸運だったよ。スティーリー・ダンの「Katy Lied」 とか、リリース前から勉強できたし。高校じゃマイク・ランドー、ジョン・ピアース、スティーヴ・ポーカロ、カルロス・ヴェガとバンドやってて、みんなずっとうまくやってきてる。そんな中で、ジェフは特別な存在だった。それが突然、こんなに早く亡くなっちまうなんて (ジェフ・ポーカロはこのインタビュー (対談) の前年、1992年に38歳で急死した)。

エディ:途方に暮れただろ。俺はジェフをよく知らないけど、俺でもそうだったからな。

  • ルーク:何に例えればいい? この気持ちを言葉にしようとすることすら難しい。無理だ。彼なしじゃ、もう俺は別人だ。だけど、彼はいつも俺の中にいる。家には彼の写真が飾ってある。「Kingdom of Desire」をこないだ聞いたばかりだけど、時には、彼の思い出がよみがえってきて、聞くのが辛いこともある。

エディ:俺自身、もしも兄貴が死んだりしたら、ヴァン・ヘイレンを続けてくなんて考えられないよ。トトはどうなるんだ? サイモン・フィリップスで続けてくのか? ジェフもそう望んでんじゃないかと思うけど。

  • ルーク:何をしたとしても、それでジェフが戻ってくるわけじゃない。

エディ:そうだな。

  • ルーク:だが、音楽を続けてかないといけないし、続けてきた。解散することも考えたよ。この5年間、アメリカじゃアルバムを出してないし。「Kingdom of Desire」は彼が参加した最後のアルバムだ。彼は同じ高校に通ってた俺たち4人の心の支えだった。歴代シンガー3人だけは、色んな理由で、長続きしなかったけど。それが、トトの個性ってことじゃ、最大の問題だった。元々はハードロックバンドとして始めたんだけど、結局はレコード会社がシングルカットにあんまり口出しするようになってきた。今は新しいレコード会社で、新しい出発だ。サイモン・フィリップスも加わってくれたし。

エディ:そういえば、ジェフのトリビュート・コンサートに混ぜてくれて、有難う。

  • ルーク:ジェフが急死して、まず決めたのは、ツアーは決行することにしたんだ。もう前売り済みだったしね。ジェフの奥さんや子供たちには、俺たちで資金的な援助をした。ツアー中はどこでも、大勢のファンが取り囲んで、アルバムを買ってくれて、「続けるっきゃないよ。ジェフだってそれを望んでるよ」って言ってくれた。3ヶ月の世界ツアーで、これでいいんだ、って感じられるようになった。こんな夢も見たよ。レコーディングスタジオでエンジニアとドラムスの音を聴いてたら、ジェフが闇の中からいきなり現れてきた。そして、サイモンがドラムスを演奏してるのを見て、俺に微笑みかけた。やるじゃないかって感じで。

エディ:たぶん彼だったんだろうな。

  • ルーク:彼だったんだよ。

エディ:信じないかも知れないけど、俺も親父が死んだ時に、同じような経験をしたよ。

  • ルーク:やっていけるなんて思えなくても、俺たちはまだここにいる、やんなきゃいけない音楽も山ほどある。あのアルバムはジェフが参加してて、彼も含めて誰もが自信を持ってる。いつもよりもっとロックしてる。ラジオで流してもらえるかなんて考えてない。

エディ:あれは素晴らしいアルバムだよ。ラジオで流れたら、誰もが気に入るんじゃないか。もう5年もアルバムを出してなかっただろ。俺に言わせりゃ、お前らの音楽は、ラジオで流れてるクソなんかより、数光年は先を行ってる。

  • ルーク:一部の人たちは、俺たちの名前を聞いても、「あぁ、あのスタジオ野郎たちね」って思うだけなんだ。俺たちがドーナツ型クッション (腰の悪い人が使う) か何かに座って、楽譜を読んでるだけだとでも思ってんだよ。

エディ:お前らが本物だって、他の奴らは「もどき」だって、判ってもらえさえすればな。

  • ルーク:そりゃどうかな。本当に良いミュージシャンが沢山いる。そこそこのミュージシャンも沢山いる。そして、ルックスだけのガキ・バンドも沢山いる。

エディ:全くだ。

  • ルーク:奴らはアルバムで演奏なんかしてないんだよ。

エディ:今の新人バンドをどう思う。刺激的な奴らとか、いるか?

  • ルーク:聴いてると鬱憤がたまるんで、ラジオもあまり聴かないし、MTVもほとんど観ない。ビルボードのチャートを見ても、誰だ?こいつら、って感じだよ。

エディ:ほんとにそうだよな。どれも月並みなんだ。ガンズ・ン・ローゼズが出てきただろ。そしたら、とたんに、同じようなルックス、同じようなサウンドの、後追いのバンドだらけだ。

  • ルーク:そうそう。まぁ、本当に良いものはトップに昇るけどな。この5年間、ルックスだけのメタルばっかりだった。そういうバンドが、アルバムで自分たちじゃ演奏してない、って知ってるリスナーがどれだけいるかな。

エディ:お前が演奏してる訳だろ (笑)。

  • ルーク:俺じゃないとしても、誰が演奏してるか、俺は知ってる。言わないけど。

エディ:お前に本当にウケるようなバンドがいるのか、ってのが聞きたかったんだけどな。

  • ルーク:お前らがいるじゃないか。

エディ:俺たちは新人じゃないよ。

  • ルーク:今は「新人で」って言わなかっただろ。俺は本当のミュージシャンシップ、良い音楽が聴きたいんだ。ビジュアルなんか、どうだっていい。「すげぇジャケット着てるな。よし、このアルバム、買いだ」ってはならないよ (笑)。

エディ:ソロ・アルバムを作り始めてんのか?

  • ルーク:そうだよ。この夏はまるまるトトのツアーだけど。

エディ:その前に仕上げちまうってことか。

  • ルーク:そうなんだ。今年の末か来年の頭まで出ないだろうけど。ロス・ロボトミーズのメンバーと作ってんだよ。ちょっと時間が出来たんで、黙って座ってたりはしたくない。アルバムを作るか、ライブをやるか。それで彼らとやってんだ。リハーサルは無し。クラブに集まって、楽しんで演奏する。自分の指の感触、自分が何か意味のあることをやってるってのを確かめたいんだ。家でテレビ観ながらビール飲んでるのもいい。得意だぜ。だけど、何かに集中して忙しくしてるほうが、ずっといい。

エディ:トトのアルバムとスティーヴ・ルカサーのアルバムとの違いは何だ?

  • ルーク:ソロじゃ、歌ったりしてるし、やりたいことがやれる自由がある。けど、それって皮肉だよな。1人の「委員会」と4 人の「委員会」の違いだ。曲作りでも、自分の出番がちょっと多くなるようにしてる。10分なんて長い曲があったりする。だいたい、曲を作ってて「これは俺のに取っとこう」、「これはトト用だ」なんてことはしない。トトの曲はみんなで作る。ソロじゃ、ほとんどデイヴィッド・ガーフィールドとの共作だ。

エディ:なんで歌うのを、そんなにためらってたんだよ。トトはヴォーカル探しで苦労してたじゃないか。

  • ルーク:それが最悪の悪夢なんだよ。もう汗びっしょりになって目覚めるんだ。

エディ:どういう意味だよ。ヴォーカルを探すことがか? 自分が歌うことがか?

  • ルーク:最初は歌いたくなんかなかった。5人もヴォーカルが交代した後じゃ、アルバムで歌って、ライブでもほんのちょっと歌ってた。

エディ:なんでそんなにためらってたんだ? トトのヴォーカルだった誰よりも上手いじゃないか。

  • ルーク:まさか。

エディ:お前とペイチで完璧じゃないか。お前らの作った曲をちゃんと判りもしないピエロを、なんでわざわざ連れてこないといけない?

  • ルーク:俺たち4人で曲を作ったら、どう歌うか、そいつに教え込まないといけなかったってのはあるな。

エディ:俺が言いたかったのはそれだ。そいつはただの操り人形だってことだろ。

  • ルーク:それで結局、険悪になったり、薬にハマったり、両方だったり、声が出なくなったりする。なんてぇか、丸い穴に四角い杭を打ち込むようなもんなんで、それがキツかったんだろな。こっちの4人は波長ぴったりなのに。

エディ:ステージでヴォーカルもやるってのは、演奏にも影響するのかな。歌詞を憶えなきゃなんないか。俺がバックコーラスやる時は、プロンプターがないと無理だけど。

  • ルーク:リフを弾きながら別のリズムで歌うのは、ガムを噛みながらマスをかくみたいなもんだ (笑)。いったんこんがらがると、すぐに舌を噛んじまう。すごく練習が要るんだ。それに、毎晩叫びまくるわけにいかない。声が枯れちまうからな。お客にはいつもベストなステージを見てもらいたいだろ。毎晩3時間のステージ、それも色んな種類の音楽をやってると、ものすごい集中力とヴォーカルのパワーが要る。ハードロックのシンガーみたいにハイトーンで歌い続けるのは、俺には無理なんだ。声域が狭いんで。

エディ:あの騒々しい金切り声のことを言ってんのか?

  • ルーク:肛門科の医者で聞こえてくるみたいな声のことだ。アアアア〜!って (笑)。

エディ:バンドの前面に立った時にはアガったか?

  • ルーク:最初はな。最初の数回のライブで声が枯れそうになった時には、もっとアガったよ。新しい曲をお客が気に入ってくれるかってのも、緊張させられた。けど、始めて1ヶ月後には、開演前に逃げ出したくなるみたいな緊張感はなくなった。逆に、開演1時間前から気分が高揚してるよ。照明が入って、聴衆の声が聞こえてくる。最高の瞬間だな。

エディ:俺は照明が消えた時 (閉演後のこと) のほうが最高の瞬間だな。ところで、声を保つために何かやってんのか? 俺はシンガーじゃないから、どう歌うのがいいか、よく判ってないけど。2時間半のステージでバックコーラスをやるだけで、最後は声がダメになる。サミー・ヘイガーも、どう歌うのがいいか、判ってないんだ。

  • ルーク:ウォームアップが大切だよ。俺はヴォーカルのコーチ、ジョン・ディヴァースが作ってくれたテープを使ってる。

エディ:サミーは、どれくらい自分の声が長持ちしそうか、どんな時に歌えて、どんな時に歌えないか、まるで判ってないんだ。

  • ルーク:彼はウォームアップするのか?

エディ:いいや。

  • ルーク:やれば、もっとずっと長持ちするのにな。

エディ:彼はギターを5分くらいジャカジャカやって、ちょびっと叫んだりわめいたりするだけだ。

  • ルーク:プロのヴォーカル・コーチからテクニックが学べるよ。俺はこれまで60回のステージで、声が出なくなったことはない。我ながらビックリしてる。衣装の準備をしながら、20分くらいテープに合わせて歌って、ウォームアップするんだ。それから、ギターを20分くらい。ビール飲んでクソしてストレッチやって、それで出来上がりだ。ギターだって、しばらく弾いてないのに、いきなりガンガン弾こうとすると、ガチガチに筋肉がこるだろ。

エディ:そうそう。

  • ルーク:それが、ツアーの終わり頃には、いきなり弾いても何も問題なくなる。

エディ:そうだな。

  • ルーク:バターみたいに柔らかくなってる。バターじゃないけど。

エディ:だから、バンドの前面に立つのを、なんで、そんなに、ためらってたんだよ。誰の考えだったんだ?

  • ルーク:バンドの他のメンバーたちだ。解散しそうになったんだけど、「お前がやれるじゃないか。知ってんだぜ。ステージで半分くらい歌ってたじゃないか」って言うんだ。ステージで本当にやってみるまでは、本人の実力は判らないよな。それで、俺自身もちょっとだけ自信が持てるようになってきた。だけど、歌うからには、うまく歌えないといけない。アホっぽいポップをやるつもりはない。歌うからには、長くて、色んなセクションのある歌をやりたい。CDの出現で、その心配はなくなった。以前のLPの時代は、アルバムに入れられる時間が限られてて、曲を捨てなきゃいけないこともあったけど。

エディ:じゃないと、ベストヒット集みたいな音楽になっちまう。

  • ルーク:そうなんだ。ひどい代物だよ。俺はLPが無くなってよかったと思ってる。

エディ:問題は、アルバムにもっと沢山の曲を入れないといけなくなったことだな。

  • ルーク:問題は、レコード会社はある曲数までしか金を払わないってことだ。アルバムに15曲入れても、10曲分しか払おうとしない。なので、倍だけ働いても、収入は減る。だが、金の問題じゃない。音楽をやることが全てなんだ。

エディ:ツアーが済んだら、トトの新しいアルバムを作るのか?

  • ルーク:一緒にやるつもりだよ。サイモン・フィリップスも加わった。

エディ:ジェフが参加したアルバムのために、ツアーだけやるのかと思ってたよ。

  • ルーク:ジェフが亡くなってからどれだけ経っても、断るほうがよかったかも知れない。だけど、サイモンが新しいものを持ち込んでくれて、今は別のバンドに生まれ変わった。誰もジェフの代わりはできないよ。

エディ:そりゃそうだな。

  • ルーク:だが、今は違う。俺も「新しいアルバムを作るだけだ」って考えてる。またアメリカでブレークできるといいよな。国外じゃ何百万枚も売れてるのに、国内じゃ何年もヒットがない。なので、新しいレコード会社、新しいノリで一発かませられるといいと思ってる。まだ俺たちの演奏を見たことない人たちが大勢いるしな。

エディ:お前のお気に入りのソロについて聞きたいんだ。最初のソロアルバム (1989年の「Lukather」のこと) に、すごいソロがある。俺とやった「Twist the Knife」が入ってるアルバムだ。あの中の「Turns to Stone」ってバラードだよ。

  • ルーク:あれはうまくいったソロだな。メロディが主体だけど、コードチェンジがすごいだろ。途中じゃ、まるでマハヴィシュヌ・オーケストラみたいだ。

エディ:俺も大好きだよ。

  • ルーク:ありがとよ。「Kingdom of Desire」にも良いのがあると思う。「Gypsy Train」のソロや「Jake to the Bone」のソロは一発録りなんだ。「さて、何を弾こうかな」なんて考えてる時間はない。とにかく演奏して、最高の出来になるか、最低の出来になるか、どっちかしかない。最高なのが録れてラッキーだった。今どきは誰もが、テープを家に持って帰ってソロを書いてるだろ。俺はそうしたくない。もちろん、目立つミスがあったら直すことになるけど。俺はライブが好きなんだ。ライブな感触を大切にしたいんだ。

エディ:今年はお前にとってエキサイティングな年になりそうだな。新しいレコード会社、新しい生活、新しいツアー、ソロアルバム、すごいじゃないか。




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