ピーター・ゲイブリエル、「New Blood」などを語る (3/7)
「The Quietus」っていうアート系サイトの2011年9月の記事より。ちょっと古いが、「New Blood」のリリースに合わせて行われたインタビュー。いつになく色々と語っている。
→ The Quietus | An Invasion of Privacy: Peter Gabriel Interviewed
「San Jacinto」はオーケストラ向きだったんじゃないですか。ネイティブ・アメリカンの元服の儀式と、J.G.バラード (*) を彷彿とさせるアメリカンな保養地とのイメージのコントラストが強烈ですよね。
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アメリカ中西部のどこかをツアーしてた時のことだ。コンサートの後、あるモーテルにチェックインした。ポーターと喋ってたら、アパッチ族だった。「すみません。今は仕事に集中できないです。アパートが火事だって、誰かが電話で知らせてくれて、家はどうでもいいですが、私の猫が心配なんです」、「なんで今すぐ戻らない?」、「仕事中ですし、戻る足がないです」。それで、車を運転して、彼を家まで連れて行った。たしかに、彼は家財道具には目もくれず、猫を探し回っていた。それが私にはものすごく印象的だった。猫は隣の住人が守ってくれていて無事だった。
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そして、私は彼と一晩ずっと語り明かした。そうしたら、アパッチ族の勇者になるための儀式について話してくれた。彼は人殺しの濡れ衣を着せられてアリゾナから逃げ出してたんだけど、そこに住んでいた当時、男の子は14歳になると、呪術師に連れられて山に登る。呪術師はガラガラヘビ (毒蛇) を持っていて、頂上まで登ったら、そこで少年に噛みつかせて、そのまま独り放置する。少年は幻覚に襲われるが、だいたいは村まで戻って来れて、勇者の仲間入りだ。もしも戻って来れなければ、そのまま死ぬことになる。
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そういう通過儀礼 (initiation)、若者が死の試練を乗り越える儀式は、色んな文化に存在する。そして、死に否応なしに直面させられる文化では、生の意識ももっと充実したものになるだろうって思ったんだよ。
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その後、パーム・スプリングス (南カリフォルニアの保養地) やアリゾナを車で走ったら、ネイティブ・アメリカンの居留地はもうディスコやレストランばっかり、金儲け本位で、文化への敬意なんてあったもんじゃない。サン・ジャシントは (パーム・スプリングスに隣接している)、砂漠の真ん中にあって頂上には雪が積もる高山で、かつてはネイティブ・アメリカンの土地だった。そこに登り始めたら、木々にリボンが幾つも結びつけてある。判ったよ。元服の儀式の名残りなんだ。
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で、それ (生死に関わる儀式とお気楽な保養地との対比) が私の考えかたの小さな土台になったんだ。幻覚は見たことがないが、物ごとっていったい何なのかの空想はあって、それをよく考えるようになった。
ガラガラヘビに噛まれた若いネイティブ・アメリカンの内には、人生がちょっとずつ同期のずれた4台のビデオ・プレーヤーだ、って悟った者もいるかも知れませんね。
- あはは、そうだね。
(*) イギリスの作家 (SFの範疇に入るんだろうな) で、独特の異様な作風。けど、「Ballardian」なんて形容詞化されてるって、欧米じゃそうとうな知名度なのか。
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