ロバート・モーグ、シンセサイザーを語る (4/10)

24 June 2017  |  Tags: Robert Moog

シンセサイザーの父、ロバート (ボブ)・モーグが、自らの半生などを語っている。Red Bull Music Academyの2003年の公開インタビューより。なお、本人は2005年に亡くなった。

→ Red Bull Music Academy | Bob Moog


軍需産業と関わるのは、そんなに悪いことではなかったんじゃないですか (たぶんMinimoogに軍用パーツが使われてることについて聞きたかったんだろうと思う)。

  • 第二次世界大戦の最中に電子工学は飛躍的に進歩した。例えば、テープレコーダーはドイツで発明されて、大戦でも使われた。作ったのは、たしかMagnetophonって会社だったと思う (*)。それをアメリカ兵が持ち帰ったんだが、彼らはたまたまAmpexっていうモーターを作る会社の技術者だった。そして、この変てこなマシンに自分たちのモーターを使うことを思いついたんだ (**)。それがアメリカでのテープレコーダーの始まりだ。

これこそモーグの音だっていうアルバムは何ですか。

  • いや、沢山あるし、どれも面白い。

(聴衆の一人) ウォルター・カルロス (その後に性転換してウェンディ・カルロスになった) の「Switched-On Bach」(1968年) はどうですか。

  • 「Switched-On Bach」とそれに続くカルロスのアルバムは、たしかに革新的だった。全く新しい可能性を示したんだ。1960年代の終わり頃、シンセサイザーの使い道っていえば、妙な音を出す、コマーシャルのエフェクトに使う、実験音楽を作る、そんな程度で、「本当」の音楽に使うことはなかった。皆さん、「本当」の音楽って何か、判るよね。

うかがおうと思ってたところです。

  • じゃ、皆さんの誰か、説明できる? 音楽業界の人は判ってる。「本当」のお金を生み出す、売れる音楽のことだって (笑)。

  • カルロスのアルバムは売れて、シンセサイザーで音楽が作れるってことを皆に知らしめてくれた。ただ新しかったから重要なんじゃない。誰もが聴きたがる音楽だったから重要なんだ。「Switched-On Bach」はずっと、クラシック音楽で最もヒットしたアルバムだったし、今でも売れてる。これのおかげで、世界中の数多くのミュージシャンがシンセサイザーに興味を持つようになった。


(*) 正しくは、AEG社がMagnetophonって製品名で作っていた。

(**) これも正しくは、持ち帰った元兵士が自分で作ったプロトタイプを関係者に披露した時に、Ampexの技術者がそれを見ていて、そして、ビング・クロスビーが自分の資金でこの元兵士をAmpexに入社させてテープレコーダーを作らせた。

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