トニー・ヴィスコンティ、プロデューサーを語る (キャリアを語る (2))

01 July 2018  |  Tags: Tony Visconti

プロデューサーのトニー・ヴィスコンティが、聴衆を前にしたインタビューで、これまでのキャリアを振り返って色々と語っている。「Red Bull Music Academy」が2011年にマドリッドで主催したもの。以前に紹介した 「ボウイのベルリン三部作を語る」 とかぶる箇所もあるが、できるだけ重ならないように紹介するつもり。

→ Red Bull Music Academy | Tony Visconti


プロデューサーの役目って、何ですか?

  • 自分は昔気質なんで、何でも屋だと思ってる。スタジオを予約して、ミュージシャンを集めて、リハーサルをさせて、デモを作って、とか、何でもだ。会社も私にそういうのを期待してる。だが、私は会社寄りじゃなくて、ミュージシャン寄りで仕事する。自分も彼らの仲間だし、彼らが夢を持ってることを知ってるし、みんなを一つにして音楽を作っていくのがどんなに大変か、知ってるし。

  • だから、私は全てに責任がある。プロデューサーはどの作業についても、ある程度、実際にはかなりの程度だけど、知識を持ってないといけない。自分はエンジニアでもあって、そういう技術を習ったし、クラシックの作曲法も習ったし、ベートーベンの交響曲やモーツァルトの弦楽四重奏曲なんかを分析したこともある。そういうのも含めて、私の音楽的な素養になってる。それに、T・レックスの時から、ミックスも自分でやるようにしてる。1971年からずっとだ。バンドと私が分かり合ってるところに、なぜ第三者をわざわざ入れなきゃいけない? 私はバンドの要求や希望に共感していたいんだ。

音楽の知識と技術の知識、どちらがより大切だと思いますか。それとも、両方とも?

  • 両方とも持ってないといけないってことはないが、両方とも持ってたほうがいい。自分の言ってることを自分でちゃんと判ってないと、信用されないし、ただの思いつきとしか思ってもらえない。例えば、15年とか20年やってきてるエンジニアに、こんなふうに言ったとする。「ギターをもっとギャンギャンいわせたいんで、グイグイやってくれ」。だが、「ギャンギャン」や「グイグイ」の意味は、人によって違う。代わりに、こんなふうに明確に言ったとする。「3.5kHzあたりをブーストしてくれ。そこを広げるか狭めるかして、ピックが弦に当たる音を目立たせたいんだ」。少しはエンジニアに伝わりやすくなる。一目おかれるし、ごまかされることもなくなる。私はエンジニアの仕事も身につけるつもりで、自分のスタジオを持っていた頃は、自分でエンジニアもやってた。今は持ってないし、フリーランスのエンジニアを雇うが、それでもミックスは自分でやる。だから、仕事の内容をちゃんと把握してることが、すごく大切なんだ。

  • 例えば、アレンジをするとする。譜面が書ければ、それを読めるミュージシャンにはとても役に立つ。近頃は、チェロやバイオリンをそれぞれ弾いてもらって、誰か若い有能な奴にその場でまとめ上げてもらい、君はただ座ってそれを見てるだけ、ってのがありがちだ。だが、何かアイデアがあるなら、自分で弾いて説明するほうが、よっぽどいい。必ずしも楽譜は読み書きできなくてもいい。ギターやピアノや歌で説明できれば、すごく役立つ。つまり、学べることはできる限り何でも学んどいたほうがいい。仕事しやすくなるし、結果として、長く仕事ができる。


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