トニー・ヴィスコンティ、ディヴィッド・ボウイ「Heroes」を語る (1) (キャリアを語る (6))
プロデューサーのトニー・ヴィスコンティが、聴衆を前にしたインタビューで、これまでのキャリアを振り返って色々と語っている。「Red Bull Music Academy」が2011年にマドリッドで主催したもの。以前に紹介した 「ボウイのベルリン三部作を語る」 とかぶる箇所もあるが、できるだけ重ならないように紹介するつもり。
→ Red Bull Music Academy | Tony Visconti
今どきのプロデューサーは、一人でPCに向かって作業することが多いですけど、今のお話のようなライブなやり方だと、何を残して何を捨てるかみたいな決定をする時に、ミュージシャンとのやり取りとかは、どれくらい重要ですか。
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それを話すには2分はかかる。ディヴィッド・ボウイの「Heroes」って曲を知ってるかな。私がプロデュースした。色んなヒーロー・イベントで使われてるけど、アルコール中毒の歌なんだ。あれはハンザ・スタジオで、24トラックでレコーディングした。ボーカル用に1トラックを使ったんだが、歌ったのを聞き返しながら、ボウイがこんなことを言う。「もっと上手くやれるような気がする」。そうすると、「録り直すと、このテイクは取っとけないよ」って返すことになる。ディジタル・レコーディングなんて無い頃だからね。彼は気合を入れ直して深呼吸して、そしてもっと上手く歌い直す。元のテイクは消えてなくなる。それの繰り返しだ。つまり、いつ「よし、これで出来上がりだ」って言うかが肝心なんだ。逆戻りはできないんだよ。
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そういうやり方で、沢山のレコーディングをしてきた。チームの誰もが同じ意識を共有して、高いテンションで高揚してくる。あれは素晴らしい経験だ。当時は、これを永久保存版にするんだ、これを歴史に残すんだ、そういう意識でやってたってことだ。そうなると、自ずと高いテンションで高揚せずにはいられない。今は全く違う。第1日目のうめき声から第7日目の叫び声まで (天地創造にかけている)、何から何まで全て取っておける。何回も何回もテイクを録って、その内からマシなのを切り貼りして作っていけばいい。そこには何の興奮も高揚もない。ライブな (その場で勝負の) やり方ってのは、その一回で永久保存版を作るっていうテンションでやることなんだよ。これでだいたい2分かな。
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