ロバート・フリップ、音楽からの引退を語る
活字になったインタビューとしては7年ぶりだそうだが、イギリスの経済紙「Financial Times」に掲載された2012年8月の記事より、主なところをかいつまんで紹介する。全体の内容は原文を見て頂きたい。
→ FT.com - The Day the Music Died
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インタビューを受けるのをやめてから、生活がずいぶん良くなったよ。今は音楽活動をやめていて、再開する目処はない。今は音楽家としての生活は徒労でしかない。(ユニバーサル社との版権係争の関係で) 音楽に集中できなかった。なので、おそろしく消耗するビジネスに取り組むために、音楽をやめることにしたんだ。
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セールスしか見ないのは、音楽家をロボットにしてしまう。音楽家にとって音楽業界は、かつては共生関係だったが、今では寄生関係だ。成功が大きくなるほど、プレッシャーもきつくなる。成功しそうになる度にバンドを壊すのは、やりたい音楽をやるには良い戦略だよ。キャリアを積み重ねたい人間には向いてないが。
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初期のキング・クリムゾンが特にロックに大きなインパクトを与えたのは、それをやれる能力はあるが何をやっているのか自覚してない若造たちによってだ。40年で何が変わったか。簡単だ。40年前は経済だけが市場だったが、今では社会全体が市場だ。道徳にまで値段がついている。
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(なぜ版権係争に執着するのかと聞かれて) 音楽は、人間であるとはどういうことか、その苦闘を表現する言語だ。それが1969年にキング・クリムゾンを作った中心にある。今でもそうでないといけない。それに背けない。もしも背いたとしたら、それは人間であるのをやめることになる。
ジョン・ウェットン方面やトニー・レヴィン方面やあちこちからロバート・フリップ引退の噂は伝わってきてた訳だけれども、本人のインタビューで確定だろう。音楽活動に飽きたとか年取ったからじゃなくて、係争に集中したいからだって言ってる。金の亡者に成り下がった音楽業界が音楽を使い潰していくのをやめさせて、音楽家がやりたい音楽を自由にやれる状況を取り戻したい、かつて自分たちがそうだったように、若造が思いに任せて音楽を作れるようにしたい、そのための係争ってことのようだ。インタビューした記者はユニバーサル社にも取材して、「フリップとの係争はほぼ解決しつつあると信じている」って回答だったそうだが、フリップ側はそうは思ってないらしい。
それにしても、なんで世界的な経済新聞の「Financial Times」なんだろね。記者は「FT Weekend (同紙の週末版) が彼の唯一の購読紙だから」って説明なんだけど、フリップにしてみれば、こういう話は音楽関係者にしてもラチがあかなくて、経済関係者に訴えたい、みたいな思惑があったのかも知れない。けど、高級な経済新聞にロバート・フリップの名前が普通に載るって、イギリスじゃプログレは当り前の基本常識なのか (笑)。ちなみに、タイトルの「The Day the Music Died」はドン・マクリーン「American Pie」の歌詞の一節。
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