ジェフ・ベック、キース・ムーンを語る (11/17)
— キースはちっとも幸せじゃない —
キース・ムーンの伝記「Dear Boy: the Life of Keith Moon」の著者が、原稿の元になったインタビューを幾つかウェブに掲げてて、その一つ。1996年とのこと。
→ Tony Fletcher's iJamming! | Jeff Beck on Keith Moon
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「こんな高い車を運転してるなんて、ちっとも格好よくないよな」とか考えながら、ステインズに着いた。そこにはキース無礼講のクラブ (原注:たぶんサージェント・ペパーズのこと) があって、みんな踊り狂ってた。俺は、どうせ帰りも運転させられるだろうから、無理しないほうがいいな、って思った。
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帰りの道じゃ、彼女は上半身裸だったし、キースもそうだったと思う。ミラーには裸の胸が写るし、運転に集中するのは難しかったよ。ラウンドアバウト (環状交差点) に時速130kmで差しかかっても、80kmくらいにしか感じられなかった。奴が「ジェフ!」って叫んで、俺が急ブレーキを踏んだら、二人ともフロントシートに転がり込んできてさ。車は路肩に衝突して、かろうじて停まった。交差点に突っ込むのは避けられたが、「やれやれ、どっちにしても車はおしゃかか」。サーフ・ミュージックががんがんかかったままで、俺たちがひっくり返った時には、ちょうど「Wipe Out」(サーフィン用語で、転ぶこと) (ザ・サーファリスの曲) がかかってるし。
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大した怪我がなかったのは幸いだった。そうしたらキースはまたいきなりロバート・ニュートンになりきって船長 (これもニュートンの役どころの一つ) を始めるし、車ん中でこんなジョークばっかりで、雲の中を漂ってるみたいな (非現実的な) 感じだった。
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週末を一緒に過ごして感じたのは、キースはちっとも幸せじゃないってことだ。豪華なマンションでも洒落たペントハウスでも、奴はそういうのを手に入れられるだけの精力の塊だが、どんな家にいたとしても、奴は普通の生活に馴染めない。決して幸せになれない。それがよく判ったのは、家中が犬の糞だらけなんだ。あんなの、見たことない。だが、奴は掃除しようともしない。「クソに気をつけろよ」、それだけだ。まるで、そこにあるのが当然かのようだ。どう扱ったらいいのか、まるで判ってないとしか思えない。
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俺は一人住まいで、家に帰っても待ってる人はいないが、大切な仲間がいて、羨ましがられるくらいだ。パーティのバカ騒ぎが終わった後、空っぽの家で道化師みたいに独りぽつんと取り残されるのとは、わけが違う。奴を見てると、そんなふうに感じるんだ。
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