トニー・ヴィスコンティ、ジョン・レノンを語る (キャリアを語る (9))

28 April 2019  |  Tags: Tony Visconti, David Bowie, John Lennon, George Martin

プロデューサーのトニー・ヴィスコンティが、聴衆を前にしたインタビューで、これまでのキャリアを振り返って色々と語っている。「Red Bull Music Academy」が2011年にマドリッドで主催したもの。以前に紹介した 「ボウイのベルリン三部作を語る」 とかぶる箇所もあるが、できるだけ重ならないように紹介するつもり。

→ Red Bull Music Academy | Tony Visconti


ザ・ビートルズの話が出ましたが、ジョージ・マーティンの影響は大きいですか。

  • ジョージ・マーティンはずっと私の憧れだった。なぜだか教えようか。高校時代、私は交響楽団に入ってた、ジャズバンドでウッドベースも弾いてて、グリニッジ・ビレッジに行ってはジャムってた。野心的なベーシストだったんだ。ガンガン弾けたよ。教会のダンスパーティじゃ、ギターでチャック・ベリーなんかのロックンロールも弾いてた。シューベルトの交響曲第1番をベースで弾く練習もしたような気がする。だが、私は自分が何をすべきなのか、何をしたいのか、まるで判らなかった。ジャズなのか、クラシックなのか。それが、ジョージ・マーティンのザ・ビートルズを聴いた瞬間に、「これだ。自分はジョージ・マーティンになるんだ」って思ったんだ。

  • もう、頼まれたら何でもやった。アレンジャー、エンジニア、ベーシスト、バックコーラス、タンバリン叩き、何でもだ。私はイギリスに渡って、ようやく自分を発見したようなものだ。実際にジョージ・マーティンに会えた時は、人生で最高の瞬間だった。ザ・ビートルズのメンバーとは、ジョン・レノン以外、誰とも仕事したよ。ただ、ジョン・レノンとは、忘れられない一夜を過ごしたな。

どんなですか。

  • ドラッグまみれの話だけど、いいかな (笑)。本当に聞きたいかな。覚悟はいいかな (笑)。言っとくけど、自分はもう12年間、ドラッグには手を出してない。

  • ボウイと「Young Americans」を作ってた時のことだ。彼が電話してきて、「今夜レノンが訪ねてくるんだけど、すごくドキドキするんで、一緒にいてくれないか。そして、打合せの中継ぎをしてくれないか」。それで訪ねてって、部屋をノックしたら、こそこそ歩き回る音が聞こえて、「誰だ」って言うんで、「トニーだよ」って答えた。警察だと思ったらしい。部屋に入ったら、山のようなコカインがテーブルの上に積んであった。それを彼らは少しずつ取り崩してたんだ。もしも本当に警察が急襲したら、それこそ大変なことになってただろうね。ボウイは内にこもって、何も喋らず、ただノートに何かを描いてるだけで、レノンと目を合わせようともしなかった。

  • それで私は幸運にも、ジョン・レノンを独り占めすることができた。「A Hard Day's Night」の最初のコードは何ですか。それが最初の質問だった。いや、そうじゃない。最初は「少し質問してもいいですか」。(リバプール訛りで)「構わないよ」。それで、もう何百もの質問をぶつけた。コカインの山を取り崩しながらね。コニャックも飲み放題だった。1970年代のロックンロール界は、そんなだったんだよ。そんなことは全然やってないなんて人がいたら、ただの嘘つきだ。

  • しまいにジョンが言った。「ディヴィッド、自分にも紙を分けてくれないか」。それで、デイヴィッドはノートを半分に破って、ジョンに渡した。ジョンも絵の才能があるのは、知ってるだろう。彼ら二人が互いに互いをスケッチしてるのを見て、もうビックリだった。描いてはページを破り取って、次のを描き始める。そんなことを朝10時まで続けてた。最後にようやく「そろそろ寝ないとな。ちょっと飲みすぎたよ」ってなった。

  • 最高の夜だった。10時間ずっと喋りっぱなしだ。ここで細かいことまで全て話すのは無理だけど、本当に楽しかった。ジョンは開けっぴろげで飾らない人物だ。史上最高のスターだけど、史上最低のろくでなしにもなれただろうね。


全く関係ないけど、NHKがBSプレミアムで毎晩遅くに、イギリスの古い音楽番組を流してくれてる。こないだ見てたら、1980年代の番組にロバート・プラントが出てきた。元映像に紹介テロップが入ってて、「レッド・ツェッペリンの元メンバー」(ま、知らん人もおるやろな)、「60年代のバーミンガム・ブルース・シーンから登場」(ふむふむ、そうやね)、「スティーヴ・ウィンウッドと同世代」(え?)。

いやいや、日本じゃ、プラントは知ってるけどウィンウッドは知らない、または聴いたことがないって人のほうがずっと多いだろう。逆だ。本国でのウィンウッドのビッグネームぶりは、こっちにいては判らない。改めて思い知った。

よく「天才は99%の努力 (または汗) と ...」って言われるけど、凡人がどんなに努力しても到達できない境地に最初から平気で立っちゃってる人が、世の中にはいる。ウィンウッドも、そういう「gifted」な、つまり天賦の才に恵まれた稀有な一人だと思う。もう一人は、自分にとっては、ピート・タウンゼント。

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