トニー・ヴィスコンティ、デイヴィッド・ボウイを語る (1) (キャリアを語る (13))
プロデューサーのトニー・ヴィスコンティが、聴衆を前にしたインタビューで、これまでのキャリアを振り返って色々と語っている。「Red Bull Music Academy」が2011年にマドリッドで主催したもの。以前に紹介した 「ボウイのベルリン三部作を語る」 とかぶる箇所もあるが、できるだけ重ならないように紹介するつもり。
→ Red Bull Music Academy | Tony Visconti
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ボウイの場合は、そんなに簡単じゃなかった。
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マーク・ボランと会って一ヶ月くらい後、もう一人の上司、デイヴィッド・プラッツにこう言われた。「よく判らないアーティストって、きっと得意だよね」。何が言いたいのか判らなくて、変なアーティストって意味かな、って思った。そうしたら、デイヴィッド・ボウイのデビュー・アルバムを聴かせてくれた。「The Man of Music」じゃなかったかな (これは2枚目のアメリカ向けタイトルで、ボウイ22歳、ヴィスコンティ自身がプロデューサーなので、憶え違いだと思う)。
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たしかに、どの曲もとことん異質だった。アンソニー・ニューレイ (イギリスのミュージカル俳優。実際にボウイは影響を受けている) みたいなミュージカル風だったり、フォーク調だったり、ブラスバンドだったり、なのでこう返事した。「たしかに変ですね。支離滅裂で」。「会ってみる?」。「いいですよ」。耳に残ったのは、彼の並外れたボーカルだった。19歳にして、すでに比類ない力強さを備えていた。
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彼は隣の部屋で待ってくれていた。最初からお膳立てされてたんだ。話し始めたら、もう止まらなくなって、どんどん盛り上がった。リトル・リチャードも、チャック・ベリーも、ジェリー・マリガン (ジャズのサックス奏者) も好きって、趣味もそっくりだ。ワード・ジャズ (モダン・ジャズをバックにした詩の朗読) のケン・ノーディンも、– この人は聴いたほうがいいよ –、それから、アメリカのザ・ファグス (The Fugs。フォークというか詩の朗読というか) も。– ジョン・レノンも使ったような汚い言葉で歌った最初のグループだ。
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その後、音楽の話もそこそこに、二人で外に出て、映画を見に行った。ロマン・ポランスキーの「水の中のナイフ」だ。生涯ずっと忘れない。そして、夜9時頃に別れた。
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それから数年間は、なかなかブレークできなかった。本当に本当に大変だった。一つのスタイルに絞れなかったんだ。ようやく注目され始めてきても、それは良いことだったけど、彼はロックンローラーなのか、フォークシンガーなのか、はっきりさせないといけなかった。みんな、分類したがる。「何でもありです」はありえない。そういう時代だったんだ。今もそうだけど。
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