ディープ・パープルのメンバー、「Made in Japan」を語る (代表作を語る (6/9))
これも「Uncut」誌。2013年6月の記事がウェブに2015年11月に掲載されたもの。イアン・ギラン、ロジャー・グローヴァー、イアン・ペイスの3人が、ディープ・パープルの代表的なアルバムについて語っている。
→ Uncut | Deep Purple: "We Were Dangerous, Unpredictable... It Wasn't Cabaret"
「Made in Japan」(1972)
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ギラン:ロックバンドのライブアルバムって、理解できないんだ。そこに見に行かなきゃ、意味ないだろ。
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ペイス:ワーナー・ブラザース・ジャパンが、日本にもハードロックのマーケットを切り拓こうってんで、日本向けにライブアルバムを作らないか、世界向けにもできるし、って言ってきたんだ。俺たちの出費は、マーティン・バーチ (エンジニア。後年はプロデューサー) を呼び寄せる飛行機代とホテル代、3,000ドルだけだった。
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グローヴァー:俺たちのライブって、どうもルーズすぎるんだよな。どこで始めてどこでやめるか、リッチーはそういうのを自分で決めてたが。喉を指でかき切るいつもの仕草でね。「Lucille」(リマスター盤に収録) を聴くと、いつも爆笑しちまうんだ。どうしようもないカオスで、俺たち、その中からかろうじて転がり出てくる感じで。
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ペイス:3晩、「In Rock」と「Machine Head」から演奏して、録音した (実際には「The Mule」「Strange Kind of Woman」は「Fireball」から)。日本を離れる前にテープを聴いて、みんな、「すっげぇいいじゃないか」。だが、最大のヒットアルバムの一つになるなんて、誰も思ってもいなかった。
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グローヴァー:なんでこんなに大成功したのか、今になってようやく判ってきた。俺たちは危険で、予測不能で、アグレッシブで、ラウドで、大胆なんだ。
これを聴かずしてハードロックのライブアルバムを、いや、そもそもロックを語るなかれ、とまで言われる存在で、制作に至った経緯とかはすでに超有名。海外の評価はどうかなってんで、Amazonとか見てみると..... (ちなみに、Amazon.com: 308 reviews / 4.7 stars、Amazon.co.uk: 211 reviews / 4.6 stars)
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ロック史上最強のライブの一つって言っていい。「Highway Star」を聴くだけで判る。リッチーとジョンは完璧なデュオだ。
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音質、プロダクション、感情、興奮、観客の反応、選曲、全てが揃っている。観客は演奏を尊重して静かに聴いてるし。「Child in Time」の途中でピンの落ちる音が入ってるだろ。そんな音まで拾ってるなんて。「Strange Kind of Woman」でのギランと観客とのかけ合いも最高だ。
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俺は今49だ。甥っ子と彼の仲間たちって若い奴らにこれを聞かせたら、もう全員が口あんぐりだよ。中にはロックを聞かない奴もいたが、誰もが信じられないって顔をしてた。はるかな高み、至高の瞬間に接したら、誰だってそうなる。どんな芸術でもだ。パープルよ、永遠なれ。
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第二期ディープ・パープルのライブを聴くなら、これだけでいい。メンバー全員の即興が、あらゆる箇所で炸裂してる。それも恐るべきスピードでだ。これを聴かずに、ハードロックのファンだなんて言っちゃいけない。
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なんでレゲエやスカのマニアの俺が、ヘヴィメタルのレビューを書いてるかって? あらゆるジャンルを越えて最高のライブアルバムだからだ。バンドのメンバー、そしてエンジニアと観客、全てが一生に一度、あの場所に集まって奇跡を起こした、その記録なんだ。
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ブラックモアとペイスが特に素晴らしい。ギランのボーカルもいいバランスだ。オルガンであんな音が出せるのは、ロードしかいない。
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これは世の中のライブアルバムを評価する時の物差しになっている。特筆すべきは音質で、完璧って言っていい。これを越えるライブアルバムは存在しない。
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ディープ・パープルは、ただのヘヴィメタルじゃない。ブルースやジャズも絶品なんだ。メンバー誰もが最高のレベルで、特にリッチーの強烈さは筆舌に尽くしがたい。イアン・ペイスも史上最高のドラマーだ。
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ある雑誌がこんなことを書いてた。「このアルバムには、ロックの歴史の中で誰も越えられなかった瞬間が詰まっている」。これが全てを言い尽くしてる。
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ディープ・パープルは最も過小評価されてるロックバンドだ。その上で、あえて言おう、「Made in Japan」は最高のライブアルバムであると。
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ギランが声が今一つだったとか言ったそうだが、とんでもない。「Child in Time」なんか、聴いてるとくらくらしてくる。「Smoke on the Water」はベストなバージョンだ。
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ディープ・パープルは悪魔に魂を売ったに違いない。悪魔がこの最高の音楽を生み出したのだ。人間がたった5人で、ライブで、オーバーダブなしで、後からソロ追加なしに、サンプリングなしに、テープ演奏なしに、ゲストミュージシャンなしに、かような空前絶後のハードロックを創れるはずがない。幾多のバンドがこれに挑戦して、ことごとく敗退した。「完璧」を越えることは不可能なのだ。
かなり意訳まじりだけれども、こんな少ないほんの短い抜粋じゃほとんど伝わらないくらい、どのレビューも激しく熱い。
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